浄土真宗本願寺派 教念寺
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仏教コラム
 第64話 多難を越えて


  5月初旬に京都出張がありました。桜の時期が終わった京都は新緑眩しい季節を迎えていました。  時間をやり繰りして京都市美術館で開催されていた「親鸞展」を拝見しました。
  親鸞聖人750回大遠忌法要の年でもあり、来館者は予想を超えての大盛況でありました。今回は真宗各派から多く出展され、初公開に近いものも出されていたようでした。  
  その中でも特に目を引いたのが国宝の『教行信証』草稿本です。一説には親鸞聖人が関東の地を後にされ箱根越えをされる峠で随従していたお弟子の性信坊に手渡されたもの、とされています。(聖人帰洛後の説もある)  

  その後、長い時を経て今日私たちが目のあたりにすることできるわけですが、親鸞聖人独特の文字の力強さと躍動感は800年まえのものとは思えませんでした。聞くところによると、戦時中は浅草本願寺(東本願寺の別院)の金庫に保管されていたそうです。しかし、空襲で本堂は焼失してしまいました。灰塵と化したかに思われましたが、奇跡的に金庫の中の『教行信証』は無事でした。  数百年の時間を超えてここに集められたお宝にはそれぞれ「多難なる事」を乗り越えてきた経歴があるかと思うと感慨深い気持ちになりました。

 正直申し上げると展覧会でお寺から貸し出しされた仏像などが展示されることをあまり好ましく思いません。「どのくらい古いのか」「どれだけの価値があるか」という好奇の目に晒される仏さまが気の毒に感じてしまうからなのです。
 しかし、最近は時代変遷の荒波と護持されてきた人たちの苦労を思うことにしています。「よくぞご無事で今日まで」の思いです。金庫に入っていたから無事なのではなく、金庫に入れてでも護る方々の思いこそが多くのかけがえのない「宝」を持ち続けたことに感謝するばかりです。