浄土真宗本願寺派 教念寺
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  第95話 今年のおはぎ

 今回もお彼岸に婦人会有志の方々が集まって、美味しいおはぎを作ってくださいました。
 手際良く昼食分まで作り終え、和やかに歓談する様は、あたり前のいつものお彼岸の風景でした。
 ああ、なんて有難いんだろう。楽しく話をするお一人お一人の顔を見ながら、少しうるっときてしまいました。
なぜなら、昨年の春のお彼岸には、その『あたり前の風景』がなかったからなのです。
 昨年三月十一日の地震直後から、暴動が起きなかったのが不思議なくらい物資が不足しました。
 被災地からはかなり離れているのに、異常な日常でありました。
 仏具屋さんにろうそくを頼むと、品切れでした。寺院で使う、大きなろうそくが、防災グッズのひとつとして瞬く間に売れてしまっていたのです。
お米も不足状態でしたから、当然例年のようにおはぎも作れませんでした。和菓子屋さんに相談しましたら、大丈夫です、その数ならお届けできますよ、と言われ、大変ホッとしたものでした。

 住職と役員さんたちは、法要当日、計画停電にあたった場合に備えて、電気がない場合の法要のシミュレーションを繰り返し行う、など、いつものあたり前の事があたり前でない昨年の春のお彼岸でありました。
 地震の後も度々大きな余震が続いていましたから、お内陣から降ろしていた仏具を、倒れてこないかなあ、大きな地震や余震があったらとうしよう、と、不安な気持ちでお荘厳したのが忘れられません。
 法要後は、恒例のお疲れ様会はなく、早々に皆さん帰路につかれました。もしも電車が止まったらいけないから、と、法要欠席の連絡が、随分入りました。
 昨年と同じ季節が廻って来て、同じ花が咲き、同じような風が吹き、花の香りが鼻をくすぐり、身体が昨年の事を思い出しての事でしょう。
 有る事難しで有難う
 本来なかったことかもしれないから、有る事難し。だから、有った事に感謝する。あたり前の事がこんなに有難いなんて。
 小さなおはぎの重みを感じていた春の一日でした。