浄土真宗本願寺派 教念寺
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  第141話 投薬と与薬

 大学生や院生の子どもたちが帰省する夏休みとなりました。
我が家は途端に合宿所となります。そんな中で、ある事を思い出しました。
 ちょうど、かかりつけの小児科の先生が、高齢を理由に引退されて、新しい小児科の先生に出逢ったばかりの頃でした。
夏風邪でお腹を壊した子に、同世代になるその先生は、漢方薬を処方してくださいました。もちろん、毎回漢方薬ではなく、一般薬の事もあります。両方を上手く処方できる先生を探していましたから、ご縁に感謝したのでした。
さて、医療現場で患者さんに薬を与える時、医師と薬剤師は『投薬』と言い、看護師は『与薬』と言います。
 医師は薬を処方する人、薬剤師は調剤する人、看護師は実行する人です。
特に入院患者さんなら、実行する人が、適切な観察力・判断力・技術力がなければ、誤薬となってしまいますから、直接携わる人として、『与薬』と言うのかなぁ、と思っていました。
 お釈迦様が、相手の能力に応じて説法をなさった事を『応病与薬』と言うしなぁ、と。それに比べて、『投薬』と言う言い方は、なんか乱暴で嫌だな、と思っていました。
そして、ちょうどその小児科の先生と出逢った頃、こんな話を聞きました。
 お釈迦様が危篤になられた時、天上からお母様のマーヤ様が、息子を助けたくて薬草を投げました。ところが、薬草は沙羅双樹の葉に引っかかり、お釈迦様に届く事はなく、お釈迦様は涅槃に入られました。そこから『投薬』という言葉が生まれました、というお話です。
目からウロコでした。
 マーヤ様は、物を投げるという意味ではなく、投手がキャッチャーミットめがけてボールを投げるように、相手の手の中に収まるように『投げた』のです!
 今苦しんでいる我が子を助けたいという母の願いと、苦しんでいる患者さんを救いたいという医師の思いは、まさしく同じではありませんか!
患者さんの身体の苦しみを取り、患う心の串を抜いてあげたいと願って『投薬』するのです。
 そんな事を思い出した今、私自身は言葉を投げつけるばかりで、相手の手中に収まるように投げかけてはいないかもなぁ、と、賑やかな夏の合宿所の中で反省しきりでいます。