浄土真宗本願寺派 教念寺
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  第164話 現代版へっついを前に

 20年近く使ってきたキッチンの換気扇がもう使えなくなりました。救急蘇生をしたり内科的に温存療法を試みましたが、もう無理となり、ついでにガスコンロも変えよう、となりました。
 古いコンロを粗大ゴミに出すべく新聞紙で包んでいたら、側にいても手伝わない四男が「このコンロ最後に使ったの俺だ。学校から帰ってきて何もないから夜食作った」と言いました。
 あぁ、そうだった。10年以上も我が家に食事を提供してきてくれたコンロだった、お疲れさまでした、と、ギリギリセーフでお礼が言えました。
 それからすぐ、四男は学校に行ってしまい、結局のところ家族はいつでも綺麗で整っているのが当たり前だからなぁ、と思いながら、レンジフードの掃除で油まみれの身体に苦笑いしました。
 そして、何年か前に、義母と母と3人の女子会で、昔の台所の話になった事を思い出しました。昔の話(主には彼女達の可愛かったであろう娘時代の話)から、台所の話になりました。その中で『へっつい』という言葉が出てきました。どうやら竃(かまど)の種類のようで、私は小学生の頃の、母の実家が建て替える前のもう使われてはいなかった土間の台所風景を思い浮かべていました。きっとその時代のお母さんは、毎日竃の前で煤だらけであったのだろうな、と想像しました。
 御釜とお櫃(ひつ)は炊飯器になり、竃はレンジになり、煙突はなくなり換気扇になりました。煙突といっても、年に一度大活躍する白い髭のお爺さんが入れるような煙突ではなく、せいぜいハムスターがお掃除できるかな、位の煙突です。
 たった何十年かで、たかが台所事情ですらそんな風に変わってきてもなお変わらず、そのずっと昔から同じ事を繰り返している事があります。浄土真宗は実に八百年も同じ作法を引き継いでいます。作法だけではなく、沢山の人によって、み教えが次の代へと引き継がれてきています。
 新しく便利になって良いものと、たとえ便利ではなくても引き継いで行かねばならないものもあるなぁ、と新しいガスレンジを前に考えています。
 昔、祖母の実家で、囲炉裏で焼いてもらった香ばしい『かん餅』の香りが鼻の奥を突き抜けていきました。薄い焼き餅が食べ頃になる間、祖母の姉のナンマンダブを聴いていた事が懐かしく思い出されました。