母の日の花

 小学5年生の時の母の日に、貯めたお小遣いでお花を一輪買いました。店先に並ぶ赤いカーネーションではなくて、母が好きな花にしようと思いました。母がよく買い物をするデパートの『ダリア友の会』という会員のロゴマークの花を見つけ、店員さんに「これ、母に渡したいんです!」と言いました。
 プレゼントですよねぇ…と、いささか困ったような顔のお姉さん。それでも一輪の花に可愛いリボンをつけてくれました。
 母の喜ぶ顔を想像しながら帰宅して、母にお花を渡すと、母は大変驚いて、それからやはり困り顔。
 うーん、なぜだろう?
 「お母さんの好きなフリージアはもうなかったんだよ、だから『友の会』の花にしたんだよ」と言うと、母が笑い転げました。
 「有難うね、これね、ダリアでなくて菊。ダリアも、今はお花屋さんにはないでしょうねぇ。お花屋さん、なんでこの子は仏さまのお花をお母さんにプレゼントするのかと思ったのかもねぇ」
 母は一輪の菊を食卓に飾ってくれました。うーん、今年も『肩叩き券』にすればよかったかなぁ…。
 しかもその頃の我が家には、小さな庭に季節毎の花が咲いていたので、お仏壇のお花は冬場しか買う事がなく、菊がお仏花という感覚はありませんでした。
 そうです、菊イコールお仏花ではありません。本来ならダリアと同じく秋の花です。明るさの調整で育てる事が可能になってから一年中市場に出回り、よって急な葬儀に間に合う為から葬儀に使われ出した花です。そしてまた、花びらが散りにくく花持ちも良いのでお仏壇にもお寺の立華にも向く花となってきたのでしょう。
 菊は四君子の一つでもありますし、日本の国花は桜と菊。皇室の紋章は菊の紋で、日本のパスポートにも菊の紋章が使われています。私達の寺紋は下がり藤ですが、鏡如上人(大谷光瑞猊下)が九條籌子さまとご結婚されて九條家の紋の下がり藤を使われるまでは天皇家と同じ菊花紋でした。
 少し前にお花屋さんの前で「菊は縁起が悪いから嫌い」と話している人達がいて、花に縁起の良し悪しなどあるかーい、と思いました。
 今、立華の時、菊は格式が高い花だから仏さまに供えるのかもなーと思っています。
 そうか、私、格式の高い花を母にプレゼントしたのか…ウフフ。

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