蓮如上人御一代記聞書17
「まきたてわろきなり」
あるとき蓮如上人は、お弟子さんにこうおたずねになったよ。
「まきたてということを知っているか」とね。するとそのお弟子さんは、
「まきたてというのは、畑に一度種をまいただけで、何一つ手を加えないことです」とお答えになった。そこで蓮如上人は、
それぞ、まきたてわろきなり。人に直されまじきと思ふ心なり。
そうお説きになったんだ。
仏さまのお話を聞くと、一旦は「ああ、そういうことか」と納得するよね。でも、もしかするとそれは自分の思い込みで、本当の教えは違うのかもしれない。小さな間違いが大間違いってことも、仏教にはあるんだ。そのことを、蓮如上人は注意してくださっているんだ。
「浄土真宗は、念仏一つで救われる教えです」と聞くと、「ああ、念仏だけしてればいいんだな」と思って、念仏に力を入れる。「阿弥陀様にお任せする心一つです」と聞くと、「ああ、お任せすればいいんだな」と思って一生懸命任せようとする。
でも、心の中で念仏やお任せが救いの条件のように思っているなら、それは浄土真宗の信心とは違うものになってしまう。僕たちの自力の心はしぶとくて、そのままのお救いをそのままとは、なかなか受け取れないんだ。
誰でも人から批判されたり叱られたくはしたくない。だからつい、自分が聞いたところを口に出さず、自分勝手に納得しようとしてしまう。でも、共に教えを聞く仲間だからこそ、聞き違いも指摘してくれるし、間違っていたなら正しい道に導いてくれるんだよ。
蓮如上人は、
まきたてにては信をとることあるべからず
と、厳しくお示しくださっている。もとより僕らは愚鈍といって、即座に教えを理解する力は持ってない。教えを聞いたまま終わらせるのじゃなく、聞いたところを口に出し、人に直してもらって、やっと阿弥陀様の心が伝わってくるんだ。自分の後生がかかった大切な話だもの。丁寧に聞かせてもらおうね。