ヤブ医者は名医
普段病院に行かない方も、昨年は新型コロナワクチン接種の為に行った、とか、普段なら様子見の風邪症状でも病院のお世話になった方などいらっしゃるのではないでしょうか。
ナースキャップが廃止されてから、医療者の中で唯一わかる職種の看護師もわかりにくくなりました。病院では、白衣を着ている人が全て医師ではなく、薬剤師、放射線技師、臨床検査技師、その他たくさんの職種が色も形も実に様々な白衣を着ています。
さて、病気になった時、どんな医師に診てもらいたいですか?逆に、どんな医師なら嫌ですか?きっと一言で言うなら『藪医者』は嫌だなぁ、となりますよね。
小学生の時、『藪』という姓の友人がいて、「私が絶対になれない職業はお医者さん」と言っていました。ヤブちゃんは字が上手だから書道の先生になればいいよー、と話した事がありました。私が『藪医者』という言葉を覚えた時でもありました。
『藪医者』は、実は名医の事だそうですね。昔、ある名医が但馬の養父(やぶ)という所に住んでいて、土地の人に治療を行っていたそうです。死にそうな病人を治すほどの治療を行うことも少なくなく、その評判は各地に伝わり、多くの医者の卵が弟子となったそうです。
この養父の名医は将軍徳川綱吉公の奥医師を仰せつかったそうですから、やはり当時の人々は、尊敬の念を持ってその名医を『ヤブ医者』と呼んだのではないでしょうか。
そのブランド『ヤブ医者』が真逆の意味になってしまいました。大した腕もないのに、名医の弟子だとブランド悪用の医者達により、いつしか名声は地に落ち、『養父』の字は『藪』の字が当てられるようになりました(藪医者の語源はいくつかあるようですが)。
私は普段から、お寺は門徒さんの心の主治医と思っています。そして、白衣(僧侶の衣は『はくえ』と読みます)を藪医者ならぬ藪寺ではあかんでーと思いながら洗濯しています。今年も阿弥陀さまの邪魔をしないようにしつつ、心の名医として精進していかねばなりません。