僧侶の本分

 現在、本願寺派は31教区、僧侶数32,000名余、寺院数10,155寺という大所帯となっています。この数字に現在の日本の人口分布を照らしてみると関東34%、近畿18%、中国6%、九州11%という数になります。関東に人口が偏っているのがわかります。また、関東と近畿、中国、九州の人口が拮抗していることもわかります。
しかし、寺院の数では反比例しており、関東の寺院数が500余に対して、例にあげた西の寺院数は7,000余に達するのです(全寺院の7割に相当します)。
更には今後の人口推移は関東では増加傾向ですが地方は軒並み減少する、と予測されています。つまり、人口の少ないところにお寺が多く、人口の多いところにお寺が少ないということに今後拍車がかかるということです。将来のわが宗門はどんな姿になっているのか、ということが真剣に問われる時代を迎えています。
親鸞聖人が越後での暮らしを終えて、関東に赴かれ20年あまりお住まいになられました。今の水戸郊外にあたりますので、のどかな田舎であったと思いがちです。しかしこの地一帯は大穀倉地帯で大変豊かな土地であったそうです。
昨年、筑波地方を旅した際に今も残るかつての庄屋さんと思われる立派な屋敷を何軒も目にして豊かな時代とともに時を刻んできたことを深く納得しました。
とはいえ、当時の豊かさがあったから聖人が教化の場所として選ばれたわけではありません。お念仏による救いの教えを命がけでお伝えくださったからにほかなりません。
現代に生きる私たち僧侶は二つの大きな壁を乗り越えなければなりません。ひとつは先に述べた人口の減少です。人の居ない場所では布教はできません。
もうひとつは宗教心の希薄化です。わかりやすく言えば、「なんまんだぶ」の出ない人が多くなっていることです。
実はここで私たち僧侶の本分を発揮しなければなりません。
お念仏の苗木を植え、育てることにこそ浄土真宗の本質があることを見失ってはいけないのです。

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