蓮如上人御一代記聞書21
「衆生をしつらひたまふ」
「阿弥陀様のはたらき」ってよく言うでしょ。阿弥陀様は僕たちに、いつもいつもはたらきかけてくださっているって。そのうちのひとつ、僕たちの心へのはたらきかけを、蓮如上人がこう説かれているよ。
衆生をしつらひたまふ。「しつらふ」といふは、衆生のこころをそのままおきて、よきこころを御くはへ候ひて、よくめされ候ふ。衆生のこころをみなとりかへて、仏智ばかりにて、別に御みたて候ふことにてはなく候ふ。
阿弥陀様が、僕たちの心を「しつらう」、つまりととのえてくださるとおっしゃってるね。阿弥陀様は、ぼくたち衆生のあさましい心にはたらきかけてくれるけど、悪い心をそのままにしておいて、その悪い心に真実の心を与えてくださりよいものにしてくださる。悪い心を良い心に取り換えるわけじゃないと説かれているんだ。
みんなが朝夕口にしているお食事は、お母さんかお父さんか、誰かが味をととのえて出してくれてる。だしをとったり、塩を振ったりしてね。そのとき、料理する肉や野菜という素材を取り換えるわけじゃなく、素材はそのままにととのえていく。
阿弥陀様も、僕たちの悪い心を取り除いて良い心にしていくわけじゃなく、悪い心をそのままに、そこに真実信心を与えてくださり、仏になるに違いない僕たちに仕上げてくださるってことなんだ。
そしてそこに与えられるのは、阿弥陀様のお名前、名号さ。名号には、阿弥陀様が積んできた功徳がいっぱいつまっている。だからこの名を称えることだけで、僕たちは仏になることができる。すると、「ああ、かたじけない、もったいないことだ」という心が出てくるね。これがつまり「よきこころを加えて、よくめされる」ということ。阿弥陀様の一人働きで、ぼくたちは仏にならせてもらうんだよ。