蓮如上人御一代記聞書1
「道徳、念仏申さるべし」①
今日から蓮如上人の御一代記聞書を勉強していこう。
蓮如上人は、それまで参詣者も少なく不振を極めていた本願寺を、今のような大きな教団に育て上げた方さ。「御文章」というお手紙形式の法語をたくさん作られ、親鸞聖人のみ教えを広められたよ。他の仏教教団から武力攻撃を受けたり、政治的に圧力をかけられる中、文字通り命がけでみ教えを守りぬいたんだ。
そんな蓮如上人の、日ごろ話されていたお話しやふるまいを記録したのがこの「御一代記聞書」さ。じゃあ、さっそく中に入っていこう。
ある年の正月、京都の勧修寺村に住む道徳という人が蓮如上人に新年のあいさつにみえたよ。道徳さんに対して上人は
道徳はいくつになるぞ、
道徳、念仏申さるべし。
と語られるんだ。
日ごろから蓮如上人をお慕いし尊敬していた道徳さん。蓮如上人もそのお年を知らなかったわけじゃないと思うよ。ではなんでこんなことをおっしゃったんだろう。それはね、後生の一大事ということを伝えたかったからなんだ。
浄土真宗のお寺では、お正月に修正会とか元旦会という行事があるよ。きっと道徳さん、その修正会に参列されたんだろうね。で、大好きな上人に、いろんなことを話されたんだと思うよ。自分の事や妻の事、息子や孫たちのこと、昨年の収穫のこと、今年どんなことがしたいとかね。
でも、それらはすべてこの世のこと、つまり今生事さ。これからどのようになっていくかわからないし、結局はむなしいものでしかない。本当に求めるべきは浄土往生、目を向けるべきは自分自身が毎日の生活の中で地獄行きの種まきばかりをしているという事実なんだ。
だから上人は、「そうか、道徳、お前も大変だな。でもそれはそれとして、お前はいくつになったんだい。一年一年と年が過ぎていくことは、自分の命が終わりに近づいているということなんだよ。この世に生を受けて一番大切にしなければいけないのは、この次の生で自分がどこに行くかということ。阿弥陀様の呼び声に耳を傾けて、念仏しなきゃいけないよ」と、やさしくお勧めくださったんだ。